鯨井万作歌詞集

鯨井万作保存会 2005/10/01

鯨井万作手踊り(下妻)

埼玉県川越市指定無形民族文化財

1   そうだアヨー アラそーうだよーー        ヨホホイーー
    今年は コラ 世が良い豊年どうしだから   ヨホホイーー
    穂に穂が コラ 重なり 舛はまたいらぬで  ヨホホイーー
    箕でさで計ります 今年は世がよい       ヨホホイーー
    豊年どうしだから お伊勢また詣りに      ヨホホイーー
    どんどと 参ります 遥かまた向うに       ヨホホイーー
    箱棟見ゆるが あれこそまことの         ヨホホイーー
    下妻の出店に 間違いは御座らぬ        ヨホホイーー
    もしまた皆様 うたぐりあるなら           ヨホホイーー
    町へと登りて 右のまた中程に           ヨホホイーー
    紺のまた暖簾に お伊勢屋と書いてある     ヨホホイーー
    あれこそまことの 下妻の出店に          ヨホホイーー
    間違いはござらぬ 間違いはござらぬ       ヨホホイーー
              テケナーハーーヨホホイーー

2   出店のよ アラ番頭さんよ             ヨホホイーー
    お店に掛けてある 白地に矢羽根の      ヨホホイーー
    ついたる手拭は 一ひず切りては        ヨホホイーー
    おいくらとなります 一ひず切りては       ヨホホイーー
    四銭と五厘だよ けれどもお客さんよ      ヨホホイーー
    お好みとするなら お値段を割ります      ヨホホイーー
    四銭もの二銭に あなたのことなら       ヨホホイーー
    二銭ものただでも あげたいけれども      ヨホホイーー 
    義理とまた世間の 人前かねては        ヨホホイーー
    まんざらそうにも 出来ませぬ出来ませぬ   ヨホホイーー
    見ればまたお客さんは 踊りが上手なようだ  ヨホホイーー
    踊りの一つも 踊ったことなら           ヨホホイーー
    人目を忍んで ふところ袂に            ヨホホイーー
    ちょくらちょいと 投げ込む             ヨホホイーー
    やりますよ やりますよ               ヨホホイーー
             テケナーハーーヨホホイーー

3   これおよー アラかぶりて                 ヨホホイーー
    下妻の街道に 出店をつくるには            ヨホホイーー
    越後の大工さんと讃岐の左官さんと          ヨホホイーー
    其の他また 大勢をいちどにたのんで         ヨホホイーー
    出店を出すには 一膳めしやで             ヨホホイーー
    お女中を頼むには 下妻のお小夜ちゃんと      ヨホホイーー
    お花ちゃんと おせんちゃんとこのやまた三人は   ヨホホイーー
    名代のお洒落もので銘仙の着物に           ヨホホイーー
    博多の帯を こからちゃんとしめて            ヨホホイーー
    緋ぢりめんの襷で じょにゃくにゃ致せば        ヨホホイーー
    これを見た若い衆は こたえせぬ こたえせぬ     ヨホホイーー
             テケナーハーーヨホホイーー

   
出店(でだな)  四銭(しせね) 二銭(にせね)





          数え唄

   正月とせエエー   承知で親達させたがる
                   娘もしたがる針仕事 針仕事

   二月とせエエー   逃げ出す女子 とっかまえて上に乗り
                   押さえてするのが大の灸 大の灸

   三月とせエエー   さあさおいでと ごしんぞが前ひろげ
                   しっかと抱きつく乳の身児を 乳の身児

   四月とせエエー   仕掛けた処に人が来て 魔がわるい 魔がわるい
                   お寺の本堂で 生臭料理 生臭料理

   五月とせエエー   後家様もしたがる 明け暮れにエキセキと
                   行かずになるまい 寺参り 寺参り

   六月とせエエー   娘も年増もするときに 目を細く 目を細く
                   急いでするのが 薄化粧 薄化粧

   七月とせエエー   静かに割れ目 指の先で くじくるは
                   あかぎりくじくる 熊の膏 熊の膏を

   八月とせエエー   初めはどうやら 痛いけれど 痛いけれど
                   だんだん良くなる しゃくの腫れ しゃくの腫れ

   九月とせエエー   黒い毛が もじゃもじゃと はい下がる はい下がる
                  口をパックリと開いているのが 般若面 般若面

   十月とせエエー   じゅくじゅく 水気のさす穴を 突っ突けば
                   中から出てくる 蟹の泡 蟹の泡

   十一月とせエエー 入れると間もなく 流します 流します
                   質屋に入れたる ボロどてら ボロどてら

   十二月とせエエー 女房もしたがる 明け暮れに
                   旦那もしたがる 金儲け お目出度や






              八木節 (川越新小唄より)

    1   ハアーーー
               平和双六 パラリと賽を
                      振れば嬉しや川越泊まり
               ここは絵の街 ご城下街よ
                      招く桜にみな誘われて
               来たか喜多院 一重と八重が

   (合いの手)      しっちょい しっちょい しっちょいなと しっちょいばけつは十三銭
                  安いと思ったら底抜けだ

    2   ハアーーー
               春の祭りは 久保町不動
                       吹くはそよ風のぼりが揺れる
               乙女心も またまた揺れる
                      青葉涼しい ご城下町に
               寄せる人波 人気の波よ

   (合いの手)      しっちょい しっちょい しっちょいなと しっちょいばけつは十三銭
                  安いと思ったら底抜けだ


    3   ハアーーー
               山車の太鼓が 緑の空へ
                         ドンとはずめば 心もはずむ
               祭り半纏  おしろいつけて
                       明日は氷川の大秋祭り
               明日は氷川の大秋祭り

    (合いの手)      しっちょい しっちょい しっちょいなと しっちょいばけつは十三銭
                   安いと思ったら底抜けだ


    4   ハアーーー
               川越名物 まだまだあるが
                      唄も踊りも 練習不足
               今後ますます勉強つんで
                      又の会う日を おん楽しみに
               又の会う日を おん楽しみに

    (合いの手)      しっちょい しっちょい しっちょいなと しっちょいばけつは十三銭
                   安いと思ったら底抜けだ





             八木節 (国定忠治より)

    1   ハアーーー
               ちょいとこの場を 借り受けまして
                           又も出まして おしゃべり致す
               音頭とるとは おおそれながら
                           故郷の訛りや 言葉の違い
               お許しなされば 文句にかかるが
                           おおいさねー
    2   ハアーーー
               ここに名高き 国定忠治
                        国は上州 あの佐和郡り
               親の名前を 忠兵衛というて
                        二番息子が 忠治でござる
               生まれつぃての 侠客肌で
                         音に聞こえた 国定村の
               人のためなら 喧嘩もするさ
    3   ハアーーー
               人もうらやむ 大貸し元で
                        頃は弘化の 三年九月
               今日も明日も 明日も今日も
                        勝負勝負で 其の日を送る
               勝負勝負で 其の日を送る
    4   ハアーーー
               もっとこの先  読みたいけれど
                         見れば踊り子も 疲れた様子
               踊りどころか  音頭が大儀
                         ほどのよいとこ 段止めまして
               お後先生と   交代いたすが
                         おおいさねー




             追分 (馬喰うとも呼ぶ)

    1    馬喰うさんかよ オーホイ  どこで夜があけーたよーーーー
                   三十三坂 オーホイ 七つ目の茶屋でよーー

    (合いの手)    畜生のたくれ両端しゃ川だよ真ん中通れば鯨井が近いよ
    
    2    箱根八里はよ オーホイ 馬でも越すがよーー
                   越すに越されぬ オーホイ アレサ大井川

   (合いの手)    畜生のたくれ両端しゃ川だよ真ん中通れば鯨井が近いよ

    3    馬喰するせかよ オーオイ 日酒が呑めるよーーー
                   馬喰やめたのにゃ オーホイ 日酒が呑めぬよ

   (合いの手)    畜生のたくれ両端しゃ川だよ真ん中通れば鯨井が近いよ

    4    揃ろった 揃ろたよ オーホイ 踊り子が揃ろうたよーーー
                   稲の出穂より オーホイ アレサ良く揃ろうたよ

   (合いの手)    畜生のたくれ両端しゃ川だよ真ん中通れば鯨井が近いよ

    5    あまり 長いのはよ オーホイ 一座が大儀よーーー
         ほどの良いとこよ オーホイ アレサ うらとめるよ

   (合いの手)    畜生のたくれ両端しゃ川だよ真ん中通れば鯨井が近いよ







             口説き (鈴木主水より)

    花のお江戸のかたわらに さてもめずらし心中はなし
       ところ四ツ谷の新宿町よ 紺の暖簾に桔梗の紋は
    音に聞こえし橋本屋とて あまた女郎しゅのある祖の中で
       おしょく女郎しゅの白糸こそは 歳は十九で当世育ち
    愛嬌よければ皆人様が 我も我もと名指してあがる
       わけてお客は何方と聞けば 春は花咲く青山辺の
    鈴木主水と言うさむらいは 女房持ちにて二人の子供
       二人子供のあるその中で 今日も明日もと女郎買いばかり
    見るにみかねて女房のお安 ある日吾がツマ (夫)主水に向かい
       これさ吾がツマ(夫)主水様よ わしが女房でやくのじゃないが
    二人子供はだてには持たぬ 止めておくれよ女郎買いばかり
       十九、二十歳の身じゃあるまいし 人に意見をする歳頃で
    金のなる木は持たしゃんすまい どうせ切れるの六段目には
       連れて逃げるか心中するか 二つ一つ思案と見える
    それじゃ二人の子供がふびん 子供二人と私の身をば
       末はどうする主水さまよ 言えば主水は腹立顔で
    叔父の意見で止まないものが 何をこしゃくな女房の意見
       己れが心で止まないものが 女房ぐらいの意見じゃ止まぬ
    ぐちなそちより女郎しゅが可愛い
       それがいやなら子供を連れてそちの里へと
                   出て行きやがれと
    あいそずかしの主水の言葉 またも主水はこやけになりて
        出て行くのは女郎買いすがた
                              ヤンレーーーー


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